2016/06/09 10:03
リネンの一番似合う季節に、今ではどれだけ大金を積んでも、
2度と手にすることの叶わない、世界に1点だけの特別な1着を
アイリッシュリネンは、高級リネンの代名詞の一つとして、
今も人気と信頼を集めています。
しかしアイルランドでのリネン生産は、原料のフラックス(リネン原料の亜麻)栽培も、
フラックスから糸を紡ぐ紡績も紡糸も、1980年までに全て廃業となり、
現在では織物を作る製織工程を行う工場が、かろうじて残るのみとなってしまいました。
本来アイリッシュリネンは、主に北アイルランドで栽培されたフラックスを
アイルランドで糸に紡ぎ、アイルランドで生地にしたものでした。
しかし今、アイリッシュリネンとして販売されている物は、
フランスやベルギーで栽培されたフラックスを、中国やイタリアで糸に紡いで
アイルランドで織り上げる工程のみを行ったものとなっています。
つまりアイリッシュ・リネン・ギルドが管理する商標のみが
残っていて、高品質であることは確かなものであっても
実際はフレンチリネンやベルギーリネンと呼ぶ方が
正しいのかもしれないということです。
このジャケットは、アイルランドで本来のアイリッシュリネンが
作られていた1930-1940年頃にイギリスのSteegan社で
仕立てられました。
生地は、1795年から高質なリネン製品を作り出してきた、
北アイルランドのMOYGASHEL社
(今はMOYGASHEL社も廃業し、[The Linen Green]という
ショッピングセンターになっています)の生地が使われた物で、
それは、巷に溢れる所謂「アイリッシュリネン」とは
全く違う正当性の証です。
そしてこの1着は、今ではどれだけ大金を積んでも、
2度と新たに作る事の叶わない、大いなる遺産と呼べるものです。
フラップ無しのパッチポケット、
2つボタンのプレーンなVintageだったものを
ボディのフォルムやポケットの変更、
サイドベントや袖の切羽を作り、ライナーを手でまつり付けるなど
空気を含むふくよかな表情と、生地の豊かさをさらに高め、
今と古さを愉しみ繋ぐ1着に昇華させました。
流行やブランドや値段の多寡に惑わされず本質を識る
価値観を持った方々の
その人自身を魅せるこの世に1点だけの1着です。
Jacket =1930-1940 Vintage ALTERATION British Made Irish Linen Sports Jacket
[Alteration By Manure Of Drawers]¥76,680 intax
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